地方創生が進められつつある一方で、各地で語られる若者流出の問題。なぜ若者は流出し続けるのか?地域は何をすべきなのか?おこがましくも、移住デザイナーの視点から少し考えてみました。
きっかけは日経の記事
おこがましくも、こんな記事を書く気になったのは、Facebookでシェアした日経の記事がきっかけ。(この記事もTwitterで流れてきたもの)
東京への一極集中が止まらないという内容の記事で、各都道府県の転入・転出の数値がランキング化されていました。愛媛は「転出超▲3,647人」という結果。
この記事の投稿にコメントを入れてくれた方に返信しているうちに、自分の中で考えていたことが割とまとまった気がしたのでブログに起こしてみた次第です。
※市毛=ぼくの名前です。
★ 東京圏に11.8万人転入超(日本経済新聞電子版 2017/2/1付)
【東京圏に11.8万人転入超:総務省が31日発表、都道府県をまたいで引っ越し、転入届を出した日本人を集計(2016年)。
愛媛県は「転出超▲3,647人」】これは現実で、嘆くべき数値としてとらえるのではなく、正面から受け止めたうえで「で、どうするか?」を考えるための数値だと思います。
前向きにとらえれば「指標」となるデータです。
過疎地で頻繁に語られる問題
わが家が移住した、四国のはしっこにある愛媛県松野町は、県内で一番小さな町です。ご多分に漏れず、近隣の宇和島市などと同様に、進む過疎化や若者流出の問題には町の人も危機感をもっています。
東京にいた頃は、自分の住む地域の人口なんてまったく気になりませんでした。
松野町の総人口は3,977人(2016年10月1日推計)だそうです。4,000人切ってます。対して、わが家が東京で最後に住んでいた練馬区は、総人口726,748人(2016年10月1日推計)だそうです。
ちなみに東京都の総人口は13,634,685人(2016年10月1日推計)とのこと。
個人的には、1,300万人も住んでいる東京に戻る気はないですし、そんなとこに住みたくないです。たま~に遊びに行くだけで十分(それでも結構疲れます)。でもその一方で、人口が4,000人を切った移住先の過疎地は人口減にあえいでいる。引き裂かれているかのように見えるこの状況。
現実的には、この人口差はどうにかなるレベルのものではないですし、そもそもどうにかする必要性も、はたしてどこまであるのだろう?と思ったりもします。
ところで、人口が少ないと何がダメなのでしょう?
ぼくら夫婦に関していえば、人口が少ない地方を求めて移住をしました。人口が多すぎる都会にうんざりしていたからです。
次項で語っていますが「小さな町」だからこそのメリットというのは確実にあります。
人口が少ないと消滅するかもしれないのは実は自治体で、そこに住んでいる人が住む家を失うわけではありません。
では、例えばぼくらの住む松野町のような小さな自治体が消滅するとどうなるのか?おそらく、宇和島市など近隣の大きな市や町に吸収合併されます。松野町役場は、例えば宇和島市役所松野支所といった感じになるのでしょう。
そうなるとどうなるのか?正直ぼくにはわかりませんが、今のような松野町独自のまちづくりは進めづらくなるのかもしれません。
それ以前に、少子高齢化があまりにも進むと、まちづくりどころではなくなるでしょう。
そういう意味では、例えば自治体が消滅しない程度の人口をキープすること、また高齢者の%が上がり過ぎないように若者(40代でも過疎地では若者です)を増やすこと、というのが(もはや自明ですが)当面の課題だと思います。下記でも述べていますが、転出の増加と子育て世代の不足による、地域の少子高齢化はかなり深刻です。
子どもを産む世代の若者が少ないのが現実ですが、若者流出が食い止められたとしても、それでも足りないのでは…?と思います。もちろん、地域に愛着のある若い世代はひとりでも多い方がいいと思います。ただそれでも支えきれないくらい、高齢化が進むのは必至です。
これについては、また別の記事をいずれ書くつもりですが、解決策はとりあえず移住促進しかないのかな~と、個人的には考えています。
若者流出の原因 / 人口が少ないとダメなのか?
☆この記事で書きたかったことのほとんどは、この項にまとまっています。
上記のFacebook投稿のコメント欄 Fan Uwajimaさんとのやりとり。
若者流出問題はここで語られました。
その人の考え方や価値観にもよるのでしょうが、絶対数の多い少ないは必ずしも問題ではないような気がします。私も東京の雑踏はうんざりです。
ただ、減り続ける、特に若い人が流出し続ける構造が存在し続ける状況については手を打っていかなきゃいけないかなと感じます。
市毛(ぼく)の返信
そうですね!人口減が必ずしも悪かといえば「小さいからこそ出来ること」というのもありますし、そもそも松野町の規模でなければ、ぼくなんかが行政とお仕事で絡むこともありませんw そういうダイナミズムや面白さは数千人という規模ならではだと思います。若者の流出は(ご存知のとおり)これまで「田舎に仕事はないから都会に行け」と大人が送り出してきたことが原因(正直こっちに来てまだそんな感じなのかと驚きました)かと。流出が止まらないのはそれが続いているのでしょう。でも世代が変われば価値観も変わり、違う感性で地元を見る目のある若者たちは育っていると思います。ただ!彼らが大人になるまで持つのか?!…という状況なのかな~と。そこは移住者に頼るというのが良策ではないか?と今のところはそう思っています。
「大人が送り出してきたことが原因」同感です。「世代が変われば価値観も変わり、違う感性で地元を見る目のある若者たちは育っている」これはあるかもしれませんね。いすれにしても…、で、今の私たちが何をするの?
ここはできれば地域の人々が共有して取り組むことができるといいですね。もしそうすることができればその取り組みに参加すること自体が地域で生活することのやりがいの一つにもなるかもしれないと思いました。そしてその大人の姿を若い人が見ている…
市毛(ぼく)の返信
ちなみに個人的には若者は一度「都会に出た方が良い」と思っています。若いうちになるべく早く広い世界を見るべきです。高校ぐらいでもいい気がしますw その上で何をしたいのか?考える若者になってほしいです。ぼくは「地元に若者を縛り付ける」のも逆に賛成したくないところです。子どもたちは自由であるべきなので、広い世界に羽ばたいて行く手助けをするのが大人の役割だと思っています。では地域は何をすればよいのか?「子どもたちが戻りたくなる故郷を作り上げる!」これにつきると思います。戻って来たい故郷には自ずと戻ってくるのではないでしょうか。
以上!この記事で書きたかったことでした(もう少し余計なことも書きますが)
若者流出を食い止めるために子どもを地域に縛り付けるのはいかがなものか?
子どもが都会を体験してみたければなるべく早めにやらせちゃった方がいいのでは?
「田舎に仕事はないから都会に出ろ」と、若者を流出させてきたのは実は地元の大人たちというのは周知の事実ですが、いまだにその傾向があるというのも驚くべき事実のようです。それなりに歴史も長いので、急に流れがやむこともなさそうです。
子どもは自由であるべきだと思うのです。
都会に行ってみたければ行けばいいと思いますし、行きたくない子を行かせる必要もまたありません。
しかし、地方から若者がいなくなる→だから地域に縛り付ける、というのは、仕事がないから都会に行けと実は同じで、どちらも大人の都合の押しつけに他なりません。子どもを地域の犠牲にするのはまずいだろうと思います。
※この項はスルーしていただいても結構です。データです。
若者流出もそうだけど人口減少も…
平成29年度の愛媛県庁の県推計人口によれば以下のとおり。
平成28年度1月1日人口 1,383,496人
平成29年度1月1日人口 1,372,837人
愛媛の人口は、去年に比べ、10,659人減。内訳は、自然減▲7,798人(出生9,946人 死亡数17,744人)、社会減▲2,861人(転入40,328人 転出43,189人)。
(日経の記事では「愛媛県は転出超▲3,647人」ですがこの統計だと▲2,861人)
ちなみに、松野町の2016年度転入者数は132人らしいです。転出者数は110人。
転入がけっこう多いじゃん、と思いますが、その大半が実は町内の老人ホームに入居されるお年寄りなのだそうです。ちなみに、松野町の65歳以上の割合は42%以上(2016年1月)。
前述の久保さんのコメントにもあるように(久保さんはお隣の鬼北町在住ですが)、ぼくらの地域に住んでいて感じるのは、若者の流出よりも、人口減少(出生数より死亡者数が上回ること)の方が印象が強いです。
なぜかといえば、子どもや若者の数よりも圧倒的に高齢者の方が多いからです。
ちなみに、ひーくん(うちの1歳の息子)と同い年生まれ松野町全体でなんと14人です。
ひーくんの世代では、流出する若者の絶対数すら危ういという…。
若者流出も問題だけど、子育て世代の移住促進も待ったなしかと思います。
また、「若者流出」でちょっとググるとこんな資料も出てきます。
★ 移動する若者/移動しない若者 – 労働政策研究・研修機構(PDF)
以下、抜粋して引用させていただきます。
就職者数そのものが激減しているため、こうしたことが「地域から若者がいなくなっている」というイメージの根底にあるのではないかと推察
先行世代(今のシニア世代)と比べ、現代の若者には地方・地元定着傾向が強まっていると言えます。
もちろん、一概に言えることではないですし、地域によっても傾向は違うと思います。
また、こういうデータもありました。
以下、引用させていただきます。
人口流出の主要な要因が経済環境、特に雇用環境にあることを示唆している。すなわち、若者にとって魅力的な就業機会が地方に不足していることが、地方から東京圏への若者の流出を招いていると考えられる。
地方は、起業するには天国ですが、就職するとなると難しいのは事実でしょう。
大学進学にしろ、就職にしろ、都会を体験するのは別に悪いことではないと思います。
むしろ抑えつけて都会コンプレックスが30~40代になっても抜けないとかも問題かと…。
ただ魅力的な地元の就職先、これがあれば若者流出の歯止めとなる可能性は高いかもしれませんよね。
先日、松野町のすぐ隣の高知県は西土佐の道の駅「よって西土佐」と、道の駅「とおわ」に久しぶりに足を運んだのですが、スタッフに若い人が多くてびっくり!しました。とおわに至ってはイケメン揃いだった印象。
魅力的な就職先があれば、若い人材が地元で活躍する!という好例に思えました。
地域がすべきことは何か?
前述のぼくのコメント。
「子どもたちが戻りたくなる故郷を作り上げる!」これにつきると思います。戻って来たい故郷には自ずと戻ってくるのではないでしょうか。
思うに、それこそが松野町などが目指すべき地域活性化なのかもしれません。
前段ではいろいろ書きましたが、松野町を含め愛媛県の里山地域は、
子育てには素晴らしい環境!
です。まだ知られていない良い取り組みがたくさんあります。
こっちに来て知ったことですが、たとえば松野町の小学校では、田植えや稲刈り、郷土料理体験や、うなぎ漁など、年間を通してかなりの量のさまざまな体験カリキュラムがあるのです。すべて地元のものです。
本当にうらやましいぐらいに。ぼくも小学校のときそんなことしたかった!
また、松野中学校では、株式会社松野中学校なる取り組みが実現しています。これは実際に株式会社を作って、地元での起業や経営、ビジネスを中学校で体験してしまおう!というカリキュラム。
大人サイドからのアプローチとして素敵な例だと思います。
宇和島でも有名なのがこちら。
★ 女子高生、鮮やかマグロ解体 私たちフィッシュガールズ!(朝日新聞デジタル)
彼女たちは、24時間TV出演や、研修でシンガポール遠征まで果たしています。
フィッシュガールズは愛媛県でも飛びぬけた例ですが、これぐらい体験してしまったら、彼女たちのこれから先の人生にすごく影響すると思いますし、地元との繋がりは計り知れないものだと思います。
☆松野町のイベントでマグロの解体ショーを披露してくれた時のフィッシュガールズ!
長浜高校の水族館も特筆すべき例です。
★ 高校生科学世界大会入賞 長浜高2年の重松さん・山本さん快挙(産経新聞)
他にもたくさんあると思います!
ぼくは、東京の美大にいたのですが、同級生のほとんどが地方出身でした。その中で、将来どうする?みたいな話をすると、ほとんどが東京での就職を目指すという中で、なぜか福岡出身の友人たちだけは「東京で就職するけど、でもいつかは地元に戻って何かをやりたい」と言っていたのを思い出します。
たぶん「誇れる地元」というのは、そういうことなんだろうな~と思います。
戻ってこいと言われて戻る故郷ではなく、戻りたくなる故郷。
Q. 地域が何をすべきか?
A. そういう故郷を作る努力をする!
ってことですね!
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