「やったらええんちゃう」のスタンスで次々と革新的な地域創生の取り組みを実現する徳島県神山町。なぜそんなに騒がれるのか?地方創生のトップランナーとはどんな町なのか?いろいろ知りたくて神山町の本を読みました。





 

松野町とよく似た過疎の町、神山町とは?

人口約5000人、徳島県の山間部にある過疎の町、神山町。

「神山の前に神山はない」といわれ、日本の地方創生を牽引する町です。

まだぼくは、実際に神山町を訪れたことはないのですが、ぼくらが移住した愛媛県松野町とよく似た環境の山里なのではないかなと思います。

神山町役場(オフィシャル)

この役場のホームページひとつみても「違うなぁ」が一目瞭然。

でも、神山町創生の仕掛け人は、民間のNPO法人グリーンバレーです。

NPO法人グリーンバレー |イン神山

※先日、徳島県の認定NPO法人になられたみたいです。

なぜ、松野町と同じような規模の小さな過疎の町に、都会からIT企業のサテライトオフィスが次々と移転し、「日本のポートランド」と呼ばれ、消費者庁の移転話が持ちあがり、全国から視察が押し寄せるのか?

神山町は他所と何が違うのか?

今回ご紹介する神山本2冊を読めば、そのヒントが見えてきます。

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ぼくは、単なる移住デザイナーですが、地方に暮らすようになって、都会ではありえなかった自治体とのお仕事をする機会が増えました(昨年は9割が自治体の仕事)。

もともと「地域を活性化するぞ!」な~んてことは微塵も考えずに移住したぼくら。

ただのんびり田舎暮らしを楽しむはずが、図らずも、地域創生的な事業にも携わることが多くなりました。(末端ではありますが)

その変化に対応すべく、勉強のつもりで読んだ最初の本が、神山町の本でした。

ちなみにこの本は、いつもお世話になっている松野町役場の職員さんの机の上に置いてあったのを見かけたのが出会い。後日、自分で買って読んでみた次第です。

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神山町の本は、現在2冊刊行されています。

1冊目は、2014年に出版された、篠原匡著「未来の働き方を実験する / 神山プロジェクト」。もう1冊は、2016年に出版された、信時正人・グリーンバレー共著「神山プロジェクトという可能性 ~地方創生、循環の未来について~」という本です。

今回は、この2冊を少しだけご紹介します~!





 

① 「未来の働き方を実験する / 神山プロジェクト」

篠原匡著/日経BP社(2014刊)

最初に読んだ神山町の本はこちら。

篠原匡著「未来の働き方を実験する / 神山プロジェクト」です。

2冊のうち、まずはこちら!がおすすめです。

神山町に詳しくない方や、地域創生ってそもそもどんなことするの?という方にもおすすめ。

まさに地域創生の入門編!といえる本です。

この本は、梅星茶屋、薪パン、カフェオニヴァ、えんがわオフィス…、といった具合に、神山町のスポットや取り組みが一件ずつ紹介されていく構成になっています。

移住者の方がOPENした店や、地元の人の取り組み、サテライトオフィス、空家対策や、アーティストインレジデンスなど、神山町らしい事例がひとつずつ紹介されているので、非常にわかりやすく、把握しやすいです。

この本で紹介されている事例は、どれも神山町ならではのプロジェクトなので、そのまま真似すればよいというものではないですが、確かにこうすれば楽しそう、これは自分たちの地元にあっても効果がありそう、といった気づきや、アイデアが産まれるきっかけにつながりやすい内容になっています。

神山町の概要を知るための本としてはもちろん、地域おこし協力隊の方や、自治体の方、地元の活性化に興味がある方、移住者の方、地方への移住を考えている方など、かなり幅広いレンジでおすすめできる本です。

ぜひ読んでほしい1冊!おすすめです。

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神山プロジェクト 未来の働き方を実験する





 

② 「神山プロジェクトという可能性 ~地方創生、循環の未来について~」

NPO法人グリーンバレー・信時正人共著/廣済堂出版(2016刊)

2冊目は、割と最近刊行された本です。

信時正人・グリーンバレー共著「神山プロジェクトという可能性 ~地方創生、循環の未来について~」。

いきなり読むには、ややハードルが高いかもですが、

これぞ神山町の真骨頂!な本です。

個人的には、ほとんど読み飛ばすページがない充実した内容で大満足。

こちらは、著者の信時氏と大南さん(神山町といえばこの方)が進行をつとめるかたちで、2015年に東京の銀座三越で行われたっぽい、複数回のトーク・ディスカッションを収録した本です。

読み始めればすぐに、興味深い内容に惹き込まれます。

各回ごとに、神山町のそれぞれの分野の代表格の方が登壇し、現在に至るまでのいきさつや、未来の展望などを語られています。

グリーンバレーのメンバーの方々や、えんがわオフィス等を設計した建築家の方々、カフェ・オニヴァのオーナー&シェフに、アートイン・レジデンスに携わる作家さん、などなど。

どの章も濃密で、なるほど~!と思わされることばかり。こうして色々な方の話しがこれだけまとめてられていると、神山町は大南さんだけではない、こんなにも多くの優秀な人材が集まっているんだな~、ということが非常によくわかります。

また、すごかったのが「証言10」の章。

これまでは、あくまでも民間と役場の連携ベースで行われてきた神山プロジェクトを、さらなるへ高みへと推し進めるべく計画されている取り組みの詳細が語られています。これは読んでのお楽しみw

多少の予備知識は必要かもしれませんが、この2冊目こそ読んでいただきたい本です。

超おすすめ!

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神山プロジェクトという可能性 (~地方創生、循環の未来について~)





 

神山本を読んで

1冊目の「神山プロジェクト」冒頭で、著者の方がシムシティを引き合いに出してまちづくりのことを語られていますが、確かに「まちづくりって面白いんですよね。

まだぼくは、たかだか2年ぐらいではありますが、多少なりとも地域活性化みたいな事業に携わらせていただいて、正直、かなり楽しんでいますw

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ぼくは、2冊目にご紹介した「神山プロジェクトという可能性」を読んで、なぜ神山町がこんなにも日本の地方創生を牽引できるような、さまざまな事例を実現できているのか、ぼくが言うのもおこがましいですが、少しわかったような気がしました。

神山町と、ほかの市町村では、何が違うのか?

大南さんがいるから?

たしかに大南さんの存在の大きさは計り知れないと思いますが、短絡的に「大南さんがいるから」で切り捨ててしまうのはもったいない。この2冊には向き合った分だけメリットが得られる情報がぎっしり詰まっていると思います。

本を読んで、大南さんは、なんとなく接着剤なんだろうなと感じました。大南さんがそれぞれのプロジェクトのつなぎ役となり、ヨコの連携が生まれて、神山町の各事例がひとつの大きなうねりとなって、ぼくらの目に映るのだと思います。

話しを戻して、神山町は何が違うのか?

ひと言でいえば、

「他所がやれていなことを、神山町はやっている」

これにつきる気がします。

ワークインレジデンス、アーティストインレジデンス、IT企業などのサテライトオフィス、革新的な建築物、オーガニックなフレンチビストロ、若い移住者の面倒をみる地元の方々、シェア食堂にシェアハウス、地域内循環の試み、移住者の起業支援、創造的過疎というコンセプト、まだまだ数え上げればきりがありません。

やろうやろう、といってもなかなか実現できない市町村が多い中で、神山町はプロジェクトを計画し、それを確実に実現させてきたのだと思います。

きっと、この本には書かれていない、日の目を見なかったプロジェクトもたくさんあったのではないかと想像させられます。それでも前へ前へと進める意欲と、モチベーションと、実行力が神山町にはあるのだと思います。

それは何か?

郷土愛でしょうか?

それもあると思いますが、それだけではない気がします。

大南さんが神山町を語るとき、必ず最初に「青い目の人形」の話しが出てきます。

1927年にアメリカから日本へランダムに各地に贈られた「青い目の人形」が、たまたま神山町にもあって、1991年に大南さんら、やがてはグリーンバレーに携わるメンバーが「持ち主のもとへ帰そう」と計画し、元の持ち主を探しだして、訪問団を組んで、アメリカまで自分たちで届けにいった、というお話しです。

一見すると、神山町のまちおこしとはあまり関係ないように思えるこのエピソード。

でも、神山プロジェクトは、この「青い目の人形」から始まったと書かれています。

今回2冊目を読み終えてこう思いました。

きっとグリーンバレーの方々は、その「青い目の人形」をアメリカに返すというプロジェクトがめちゃくちゃ楽しかった!のではないでしょうか。その時の感動を自分たちの起点として、神山町のまちづくりを今でも楽しみ続けている、ということなのではないかと思いました。

つまり「青い目の人形プロジェクトは、グリーンバレーの最初の成功例であり、勝ちパターンなのだと思います。

まちづくりを楽しむといっても、もちろん、自分勝手な楽しみのためにやっているとは思いません。

地域のことを考え、そこに暮らす人々のことを考え、子どもたちのことを考え、その上で神山に移り住んできた多種多様な人たちと、どうすればより良い神山町をつくることができるのか、どうすれば20年後にも生き残れるのか、それこそ脳みそが擦り切れるぐらい知恵を絞っているに違いありません。

でもきっと、何よりもそれを楽しんでいらっしゃるのだと思います。

まちづくりのダイナミズムは、他にはない面白さがあると思いますし、それが生まれ育った地元となれば格別でしょう。

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ただ、あくまでもこれらの本に書かれていることは、神山町ならではの事例です。

神山町という風土と、そこに暮らす方々の気質と、さまざまな要因が複雑に組み合わさった結果だと思います。

そもそも、神山町はこういった取り組みを始めてすでに20年以上経つのだそうです。

これから地域おこしをしよう!と、神山町をそっくり真似しても神山町にはなれないのは自明のこと。

たとえば、ぼくらの暮らす松野町には、松野町の風土があり、そこに暮らす松野の人々の気質があり、そこで活躍する面白い面々がおり、松野町を応援してくれるファンの方々がいます。

松野町には、松野町ならではのやり方があり、それを発見し、実現することこそが、地域おこしなのだと思います。

神山町の本は、そういったことに気付かせてくれる本でした。

ぜひご一読ください。

 

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神山プロジェクト 未来の働き方を実験する

 

神山プロジェクトという可能性 (~地方創生、循環の未来について~)

 

 


 

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